決意
とにかく悲しかった。何が悲しいのか具体的に言葉で説明できないけれどとにかく悲しかった。
二人で並んで座っている電車の中。私の最寄り駅が近づいてきたから、Aさんが耳元に顔を近づけて「楽しかったよ。ありがとう」とささやいた。
嬉しい気持ちよりも、疑問が残った。なんで普通に言わずにわざわざ小声で言ったんだろう。なんで一年前みたいにずっと好きだよって言ってくれなくなったんだろう。もうそんなに好きじゃないのかな?
言いたかったことを全然言えないまま、電車のドアが開いて、「またね」といい残して電車を降りた。窓から電車の中にすわるAさんが疲れた笑顔で手を振っているのが見える。
車両を後にしてホームを歩きだした途端泣いた。
ちょっとだけAさんが電車を飛び出して追っかけてこないかという妄想をしたけれど、振り返っても、Aさんは追っかけてこず、電車は何事もなく発車した。
楽しく過ごせればいいと思ってたのに、やっぱり先がないことが悲しくて、やっぱり早く誰かの一番に思われてみたくて、あーあ やっぱり早く忘れたい。
こんなことしててもいつまでも満足できないんだ。
今度こそ別れる決心ができた。